QUEEN / BOHEMIAN RHAPSODY
Lyrics
& Music by Freddie Mercury
フレディ・マーキュリーがこの世を去ってから、もう20年以上が経っている。Bohemian Rhapsodyは過去1000年で最高の曲を選ぶ投票の一位になった。私は特別、クィーンが好きなわけではないが、A
Night At The Opera は音楽史上最高のアルバムだと思っている。しかし長年、Bohemian Rhapsody の歌詞が今一つ、分からなかった。特に中盤のオペラ部分におけるガリレオ云々というくだり。正直、大した意味はないのだろうと思っていた。しかしフレディの生い立ちが明らかになってきて、その意味が分かってきたのである。
70年代クィーンの全盛時、フレディの出身地は南アフリカ共和国とされてきた。これは嘘だったのである。彼はザンジバル生まれでインド育ちのペルシャ系なのだ。正確に言うとパールシー人と呼ばれるジプシー民族で、元々はペルシャ帝国にいたのだがゾロアスター教を信仰していた事で、イスラム社会から追われる事になった少数民族である。Bohemian Rhapsody で人を撃ち殺し、オペラ裁判にかけられ、最後に逃げ場を得る、その主人公がフレディ自身だった事がようやくわかった。
クィーンはデビュー当時から日本ではすぐに人気が出たが、本国イギリスでは散々こき下ろされたのは有名な事だ。あの頃は何故かはわからなかったが、今は何となくわかる。少数民族(日本で言えば部落民のようなものか)出身であるフレディに対する人種差別の壁、それがあった事は間違いない。当時栄華を築いたイギリスのロック界、スターたちは殆どが生粋の白系イギリス人である。その中で異様なペルシャ系のルックスを持ったフレディに対する風当たりは相当なものだったに違いない。
フレディにはコンプレックスがあり、それを派手な化粧や衣装で誤魔化していた。そして自分の出身地を偽り、本名を隠し、そのルーツを封印していた。しかし彼は天才であった。4枚目のアルバムから Bohemian Rhapsody はシングカットされ、イギリスでチャート1位になる。勝ち誇ったフレディは6枚目のアルバムで We Are The Champions という曲を大ヒットさせる。この時、まさにフレディは王者だった。とんでもない才能を持ちながら、偏見や差別で妥当な評価を得なかったクィーンが世界の頂点に立ったのだから。
その歌詞とは・・。
Is this the real life?
Is this just fantasy?
Caught in a landslide
No escape from reality
これは現実の人生なのか?幻ではないのか?なだれに飲み込まれ、現実から逃れられない
Open your eyes
Look up to the skies and see
I'm just a poor boy, I need no sympathy
Because I'm easy come, easy go
A little high, little low
Anyway the wind blows, doesn't really matter to me, to me
目を開けてごらん、空を見上げて見るんだ、僕は可愛そうな子、同情なんて要らないよ
だって僕は気楽に生きるから、良い時も悪い時も
いずれにしても風は吹くのさ、もう何だっていいじゃないか・・
まずは主人公の混乱状態をアカペラで表現している。この部分はまさにフレディの生い立ち、そして大英帝国の女王を名乗った事から来る、世間の偏見に対する反骨と思える。そしてピアノが入り、主人公は母親に向かって語り出す。「人を撃って殺してしまった、もう人生は終わりだ」と。ここでは人生における最も大きな困難を歌っている。実際に人を殺したわけではないが、よりドラマティックにオペラティックに仕上げるための演出なのであろう。
そして「死にたくない、時折生まれてこなければ良かったと思うよ・・・」というセリフで曲はオペラパートに突入していく。
Mama, just killed a man
Put a gun against his head
Pulled my trigger, now he's dead
Mama, life had just begun
But now I've gone and thrown it all away
I don't want to die
I sometimes wish I'd never been born at all
壮大なオペラパートで連呼される言葉。スカラムーチとは道化師。ファンダンゴを踊ってくれ、と願うと雷光が轟く、そしてガリレオの登場。もちろん、あのガリレオ・ガリレイだ。地動説を唱えた事でローマ教皇から有罪判決を受けながらも、地球は回っているとつぶやいたと言うガリレオ。フィガロはオペラ歌曲、そしてビスミーラとはイスラムのコーランに出てくる言葉である。
I see a little silhouetto of a man
Scaramouch, scaramouch will you do the fandango
Thunderbolt and lightning - very very frightening me
Gallileo, Gallileo,Gallileo, Gallileo,
Gallileo Figaro - Magnifico
But I'm just a poor boy and nobody loves me
He's just a poor boy from a poor family
Spare him his life from this monstrosity
Easy come easy go - will you let me go
Bismillah! No - we will not let you go - let him go
フレディのルーツはイスラムに追われたペルシャである。アフリカの小さな島で生まれ、インドで育ち、イギリスに渡り、その突出した才能を世に問うが、大英帝国のエリートたちからこき下ろされたクィーン。このオペラ部分は、フレディが才能の全てを注ぎ込むくらいの勢いで作ったのだろうと思う。そうでもなければ、こんなすごい音楽が作れるだろうか。
狂乱化した裁判、私を許してくれと叫び続け、そして曲はハードロック調になり、そこで主人公は混乱から抜け出すが、逃げ続けなければならない。そしてフィナーレの「何もかも、どうでもいいんだ、でも風は吹く」という一節。エイズになり45歳の若さでこの世を去ったフレディ・マーキュリー。まさにBohemian
Rhapsody(流浪の民の狂詩曲)はフレディ自身の人生を歌った曲であった事に気づく。
So you think you can stone me and spit in my eye
So you think you can love me and leave me to die
Oh baby - can't do this to me baby
Just gotta get out - just gotta get right outta here
君は思うだろう、僕に石を投げつけて、目に唾を吐きかけようと
君は思うだろう、僕を愛して、そして死ぬまで放置しようと
そんな事はできないだろう
ここから逃げ出さなくちゃ、ここから抜け出さなきゃ
Nothing really matters - nothing really matters to me
Anyway the wind blows...
どうだっていいさ、何もかも、どうでもいい
ただ風が吹くだけ・・・