FOCUS    フォーカス

オランダ出身の異色グループである。ジャズやクラシックの要素を取り入れたインストゥルメンタル曲中心のバンドだ。ギタリストのヤン・アッカーマンはオランダ人らしく身長2メートルあろうかという大男。そしてバカでかい手を使ってヴォリュームを操作する奏法とストリング・ベンディングを組み合わせ、泣き笑い声のような音を奏でる。スティーヴ・ヴァイなども試みているが、その迫力はヤンの足元にも及ばない。ヤンのプレーは素晴らしく表情豊かだ。当時からスウィープ奏法もやっている。つまり80年代以降トップレベルのギタリストが身につけたプレーをヤンは70年代の前半にやってしまっていた。そしてクラシック・ギタリストとしても一流だというのはソロ・アルバムを聞けばわかる。僕は彼を世界一のギタリストと評価している。

さらにキーボードとフルート、そしてエクセントリックなヨーデルを聞かせてくれるタイス・ヴァン・レア。容貌も何となくジェスロ・タルのイアン・アンダーソンに似ていて、タルとフォーカスは比較される事が多い。イギリスやアメリカではタルの方が人気があるが、フォーカスはよりジャズっぽいインストゥルメンタル曲中心のバンドなのでヒット曲が殆どないのも仕方ないだろう。

だがアメリカでもタイスのヨーデルをフィーチャーした Hocus Pocus は良く知られている有名な曲だ。様々なアーティストによってカヴァーされているので聞いた事のある人も多いだろう。この曲は2枚目のMoving Waves に収録されている。その後にリリースしたFocus3 は2枚組の大作だ。バンドが解散した状態でリリースされた Ship of Memories にも素晴らしい楽曲が埋もれている。

フォーカスは恐らく世界で最も知られていない天才バンドだ。彼らの音楽が将来誰かの手によって発掘され、 永遠に残るようになる日を心から願っている。

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